雇用契約と業務委託契約の区分について

弁護士ブログ 2018.05.15 update

1.はじめに

 昨今においては、インターネットの普及によりフリーランス、クラウドワーカーと呼ばれる者による「雇用によらない働き方」が増えています。その中で、業務の発注者と受注者の関係については、その契約関係が「雇用契約」、「業務委託契約」のどちらの契約になるかといったことについても注目されています。そこで、今回は雇用契約と業務委託契約の区分について、簡単に説明をしていきたいと思います。

 

2.「雇用契約」と「業務委託契約」の違い

 雇用契約とは、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対して報酬を与えることを約する契約(民法623条)です。これに対し、業務委託契約とは、当事者の一方が相手方に対して特定の業務の遂行を委託し、相手方がこれを承諾することにより成立する契約であり、法律上の扱いはその契約内容によって判断されますが、一般的には請負(民法632条)、準委任(民法656条)、又はこれらの混合契約として扱われるものといえます。
 このように、雇用契約と業務委託契約では契約類型が異なりますが、特に、雇用契約については労働基準法等の適用を受けるため、一般的には労働者側に対する配慮が必要となります。そこで、業務委託契約者の中でも、不当な契約解除や更新拒絶等がされた際には、自己が労働者に該当し、法的な保護が厚い雇用契約と同様の地位にあるものとして解雇権濫用法理の適用を主張するというケースもあり、紛争に至ることもあります。

 

3.「雇用契約」と「業務委託契約」の判断基準 

 では、契約関係が雇用契約と業務委託契約のいずれに該当するかはどのように判断されるのでしょうか。
まず、東京高裁平成26年5月21日判決(ソクハイ事件、第1審:東京地裁平成25年9月26日判決)が参考となります。この判決によると、契約書では業務委託契約にて契約を締結している場合であっても、労働者性を判断するにあたり「契約内容及び労務提供の実態等を総合考慮して、使用従属性があるといえるかどうか」により判断すべきとしています。その上で、当該事案における契約が請負に関する契約であること、業務に対する諾否の自由度が比較的高かったこと、報酬は出来高払いであったこと等を根拠として労働者には該当しないものと判断しています。
 そこで、労働者性を総合考慮により判断する必要がありますが、労働省労働基準法研究会がかつて昭和60年12月19日に公表した「労働基準法研究会報告」が参考になります。この報告書によると、労働者性を①仕事の依頼に対する諾否の自由、②業務遂行上の指揮監督、③場所的・時間的拘束性、④労務提供の代替性(本人に代わることができるか等)、⑤報酬の労働対価性、⑥事業者性といった観点から判断しています。
 このように、労働者性は1つの事実によって判断されることはなく、幾つかの事実を総合考慮し、実態に即して判断がなされます。

 

4.最後に

 筆者としては、インターネットの普及により雇用という契約形態によらない働き方が増え、人の働き方の選択肢が増えることは望ましいことであると感じています。雇用という契約形態は、働き手にとって必ずしも良い契約であるとは限りません。
 もっとも、雇用という契約形態によらない働き方が増える一方で、実態として雇用に該当するにもかかわらず、業務委託契約を締結するとルールに反してしまいますので、上記のように、雇用か業務委託かの区別を判断し、実態に即した契約を締結していくことが重要になります。

 

弁護士 菅沼 匠
弁護士 山口 友寛

Tweet about this on TwitterShare on FacebookShare on Google+Share on LinkedInPrint this pageEmail this to someone

Category:弁護士ブログ

Tags: