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ICOの現状について

1.はじめに

 ここ最近、日本においても、ICOに対する関心は高まりつつある状況にあります。特に、初期のベンチャー企業における資金調達手法として有用であるものとして注目が集まっているとみることができます。今回は、このICOについて、その内容、現状の法規制等について、簡単に説明していきたいと思います。


2.ICOとは

 ICOとは、Initial Coin Offeringの略であり、Token Salesなどと呼ばれることもあります。ICOは、大まかに言えば、資金調達目的を有する法人又は個人が、トークン(Token)を発行し、その対価として仮想通貨又は金銭等の財産を収受する方法により資金調達を行うことといえます。ICOは、株式公開(Initial Public Offering、以下「IPO」といいます。)と比較されることが多いですが、IPOに比べると、その実施に対するハードルが、法規制や上場審査等の観点から低いものと考えられており、日本でも初期のベンチャー企業の資金調達手法としてICOに対し強い関心が寄せられています。


3.ICOに対する規制

 ICOに対する法規制は、明確に存在しているわけではなく、現状の日本においては、ICOに際し発行されるトークンの性質に応じて、法規制のあり方をどのようなものとするかが議論されている状況にあります。トークンの性質は、ICO実施に際して発行主体により提供されるホワイトペーパー(White Paper、以下「WP」といいます。)の記載を参照することにより把握することが可能でありますが、ICOに対する法規制の概要は次のとおりとなります。

(1)仮想通貨型
 発行主体がイーサリアム(Ethereum)を利用することにより、発行主体独自の仮想通貨を発行し、当該仮想通貨を投資家に購入してもらうことにより資金調達を実現しようとするものであり、ICOと呼ばれるものの中では基本となる方法であるといえます。これに関して議論されている内容については後述いたします。

(2)前払式支払手段型
 発行主体の発行するトークンが、自己又は第三者から商品の購入等を行うに際して利用することができることを予定するものである場合、資金決済に関する法律(以下「資金決済法」といいます。)にいう前払式支払手段に該当するものとして、資金決済法上の規制に服するものと考えられます。この場合、発行主体は、トークンを利用できる相手方の範囲等にもよりますが、財務局長に対する届出、供託義務、登録義務等が課されることとなります(資金決済法第5条第1項、第14条第1項、第7条)。

(3)集団投資スキーム持分型
 発行主体は、ICOを実施するにあたり、WPを投資家に対し提供しますが、その内容には、資金調達目的として、事業計画が記載されているのが通常です。そして、発行主体が、WP記載の事業から得た収益を投資家に対し分配することを予定する場合には、発行するトークンは金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)上の集団投資スキーム持分に該当するものとして、金商法上の規制を受けることとなります。
 この点は、投資家がICOの際に出資する財産が金銭ではなく、仮想通貨であれば、この集団投資スキーム持分に該当しないと考えることができるのではないかという意見も存在していました。しかし、金融庁の見解(「ICO(Initial Coin Offering)について~利用者及び事業者に対する注意喚起~」金融庁、平成29年10月27日)によれば、仮想通貨による出資であっても、実質的には日本円等の法定通貨による出資と同視されるスキームについては、金商法規制に服することとなるとされています。そのため、(3)の型によるICOを実施する場合には、出資される財産の種類に関係なく、金商法規制が及ぶものと考えておくのが穏当といえます。


4.仮想通貨型のICOについて

 前述の(1)仮想通貨型のICOについては、発行するトークンは、ICO実施段階では、数多く存在する仮想通貨取引所において広く取り扱われているものではないため、資金決済法第2条第5項第1号の仮想通貨に該当せず、当該ICOの実施にあたって仮想通貨交換業の登録は不要ではないかと考えられていました。しかし、ICO実施に際して発行されるトークンは、ICO実施後は、当該トークンを上場することにより仮想通貨取引所において広く取り扱われることを予定するものであり、また、システム上も他の仮想通貨との交換が制限されていないケースが多いものといえます。こうしたケースについては、当該トークンは資金決済法第2条第5項第2号の仮想通貨に該当し、仮想通貨交換業の登録を取得しなければ、適法に(1)のICOを実施できないと考える見解も現時点において示されている状況にあります。


5.最後に

 現在、ICOと呼ばれる資金調達手法には様々なものが混在している状況にあるため、ICOに対してどのような法規制が行われるのかを議論することが困難な状況にあります。また、ICOは現在、ベンチャー企業の新たな資金調達手法として注目を集めていますが、日本法下において、ICO実施主体単独で行うにはそれ相応の法規制が課されると考えておく必要があるといえます。さらに、現在各国においてICOに対する見解が表明されつつある状況にありますが、ICOに対する見解も国ごとに様々であるため、ICOを実施する地域における法規制についても注視する必要があります。

 今後、ICOはさらに注目され、併せて法規制等も整備されていくかと思いますので、ICOの実施主体は、その設計の際には各国各様と思われる法規制について留意し、適切な運用が求められるものといえます。


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